「急に腰が痛くなった」
「お尻から太ももにかけてピリピリする」
「背中が痛くて息を吸うのもつらい」
「頭痛と一緒に頭皮がしびれる」
このような症状が出た時、多くの方はまず、
「筋肉を痛めたのかな」
「腰の神経が圧迫されているのかな」
「坐骨神経痛かもしれない」
と考えるのではないでしょうか。
実際、整体院の現場でも、腰痛やしびれ、神経痛のような症状で悩まれている方は数多くいらっしゃいます。
しかし、その痛みの原因が必ずしも骨・関節・筋肉だけとは限りません。
場合によっては、
帯状疱疹(たいじょうほうしん)による神経の炎症
が原因になっていることがあります。
「帯状疱疹って、皮膚に赤い発疹や水ぶくれが出る病気でしょう?」
そう思われる方も多いと思います。
もちろん皮膚症状は大きな特徴です。
しかし、実際には発疹が出る前に、
- ピリピリした神経痛
- 皮膚を触った時の違和感
- 片側だけの痛み
- しびれるような感覚
が先に現れることがあります。
この時期は、腰痛、坐骨神経痛、肋間神経痛、頭痛などと非常によく似ているため、原因が分かりにくいことがあります。
そして何を隠そう、臨床歴30年以上、身体の構造を学び続けてきた私自身も、この「帯状疱疹の初期症状」に気付けなかった一人です。
今回は、私自身の体験を通して感じたこと、そしてこれまで臨床現場で経験した症例をもとに、
- なぜ帯状疱疹は腰痛や坐骨神経痛のように感じるのか
- なぜ神経痛やしびれが長引くことがあるのか
- 帯状疱疹を軽く考えてはいけない理由
- 身体全体との関係
についてお伝えします。
見抜けなかった「自分自身の腰痛」
私自身、忘れられない経験があります。
ある日、不注意によって転倒し、腰を強く打ちました。
当然、直後は打撲による痛みがありました。
「強くぶつけたのだから、この痛みは当然だろう」
そう考えて経過を見ていました。
ところが2週間後、別の症状が現れ始めました。
それは、
- 右のお尻周辺の違和感
- 足の付け根(鼠径部)のピリピリ感
- 内もものしびれるような感覚
でした。
身体の構造を知っている私は、その時こう考えました。
「転倒によって腰椎や仙骨周辺に負担がかかり、神経に影響が出ているのではないか」
「これは坐骨神経痛や神経圧迫の問題かもしれない」
そう考え、整形外科で画像検査を受けることも考えていました。
しかし、その時に妻が私の身体を見て言いました。
「お尻のところ、赤いブツブツが出ているよ」
確認してみると、右のお尻から腰周辺にかけて、小さな水ぶくれのような発疹が出ていました。
すぐに皮膚科を受診したところ、診断は、
帯状疱疹でした。
腰を強打したことによる神経症状だと思っていたものは、実は帯状疱疹によって神経が刺激されて起きていた痛みだったのです。
自分自身の身体で経験したことで、改めて感じました。
「痛みが出ている場所だけを見て判断すると、本当の原因を見逃すことがある」
ということを。
帯状疱疹は「皮膚だけの病気」ではありません
帯状疱疹は、水ぼうそうの原因となるウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が、神経の根元に潜伏し、何らかのきっかけで再び活動することで起こります。
そのため、単なる皮膚トラブルではありません。
ウイルスは神経に沿って広がるため、その神経が担当している場所に、
- 痛み
- しびれ
- 違和感
- 発疹
が現れます。
そのため、
「腰が痛い」
「お尻が痛い」
「背中が痛い」
「頭皮が痛い」
というように、まるで整形外科的な問題のように感じることがあります。
特に特徴的なのは、
身体の左右どちらか片側に症状が出ること
です。
鍵になるのは「デルマトーム」という神経の地図
帯状疱疹が、なぜ腰痛や坐骨神経痛、背中の痛み、頭痛のように感じるのでしょうか。
その理由を理解するために重要なのが、
デルマトーム(Dermatome:皮膚分節)
という身体の神経の仕組みです。
私たちの背骨の中には脊髄という神経の通り道があります。
そこから左右に伸びる神経は、それぞれ担当する皮膚の範囲を持っています。
これを地図のように表したものがデルマトームです。
脊髄神経は大きく分けると、
- 頸神経(C1〜C8):首・肩・腕周辺
- 胸神経(T1〜T12):胸・背中・肋骨周辺
- 腰神経(L1〜L5):腰・脚周辺
- 仙骨神経(S1〜S5):お尻・骨盤周辺
に分かれています。
帯状疱疹のウイルスは、この神経の根元にある神経節に潜んでいます。
そして、身体の免疫状態が低下した時などに再び活動すると、その神経の走行に沿って炎症を起こします。
そのため、
「腰からお尻に沿って痛い」
「胸から背中に帯状に痛い」
「頭皮がピリピリする」
というような症状が起こるのです。
当院で経験した帯状疱疹の症例
頭痛・頭皮のしびれとして現れたケース
「後頭部がズキズキする」
「頭皮を触るとピリピリする」
という症状で相談された方がいました。
最初は首周辺の緊張や神経の刺激も考えられました。
しかし、その後、髪の生え際や首周辺に発疹が出現し、帯状疱疹と分かりました。
頭痛だと思っていたものが、実は神経に沿った痛みだったのです。
背中の痛み・胸の苦しさとして現れたケース
「背中が痛い」
「息を吸うと胸まで響く」
このような症状は、筋肉の緊張や肋間神経痛などでも起こります。
しかし、片側だけの痛みや、皮膚表面のピリピリした違和感がある場合は注意が必要です。
後から発疹が出現し、帯状疱疹だったというケースもあります。
腰痛・坐骨神経痛のように現れたケース
私自身が経験したのが、このタイプです。
腰を打った後だったため、最初は完全に「腰の問題」だと思っていました。
しかし実際には、
- お尻の痛み
- 足の付け根の違和感
- 太もものしびれ
は、帯状疱疹による神経症状でした。
身体の専門家である自分でも判断を誤った経験から、
「痛みの場所だけで原因を決めつけないこと」
の大切さを強く感じました。
実際になって初めて分かった帯状疱疹の辛さ
今回、自分自身が帯状疱疹を経験して、正直に言うと考え方が変わりました。
それまで私は、帯状疱疹について、
「薬を飲めば数週間で良くなる病気」
という程度の認識でした。
もちろん、早期治療によって改善していく方も多くいらっしゃいます。
しかし、自分が実際になってみると、
「これは思っていたより身体への負担が大きい病気だ」
と感じました。
本当になった人にしか分からない辛さがあります。
見た目では分からない神経の痛み。
ピリピリする違和感。
身体を動かした時の不快感。
そして、
「いつまで続くのだろう」
という不安。
これは経験した本人でなければ分からない部分があります。
私自身も、
「まさか帯状疱疹で、ここまで身体が影響を受けるとは」
と感じました。
帯状疱疹のしびれや痛みは長引くことがあります
帯状疱疹で注意したいのは、皮膚症状だけではありません。
発疹が治まった後も、
- ピリピリした痛み
- しびれ
- 焼けるような感覚
- 服が触れるだけで痛い
といった症状が残ることがあります。
これが、
帯状疱疹後神経痛(PHN)
です。
すべての方に起こるわけではありませんが、神経への炎症が強かった場合などには、痛みや違和感が長く続くことがあります。
「皮膚は治ったのに、なぜ痛いのだろう」
と不安になる方もいます。
しかし、それは神経が関係しているために起こることがあります。
だからこそ、帯状疱疹は皮膚だけを見るのではなく、身体全体の状態を考える必要があるのです。
帯状疱疹は身体全体の状態とも関係しています
帯状疱疹は、単に「その場所に発疹が出た」という局所的な問題ではありません。
身体の免疫状態や疲労、ストレスなど、全身状態とも深く関係しています。
例えば、
- 強い疲労が続いている
- 睡眠不足が続いている
- 精神的ストレスが大きい
- 身体に大きな負担がかかった
このような状態では、身体の防御機能が十分に働きにくくなることがあります。
私の場合も、転倒による身体的なストレスや痛みが重なった時期に発症しました。
もちろん、すべてのケガや打撲が帯状疱疹につながるわけではありません。
しかし、
「身体に大きな負担がかかった後、今までとは違う痛みが出ている」
という場合には、身体からのサインとして注意することが大切です。
帯状疱疹の治療は医療機関へ
整体院としてできる身体のサポート
まず大切なのは、帯状疱疹が疑われる場合は早めに皮膚科など医療機関を受診することです。
抗ウイルス薬による治療は、発症早期ほど重要になります。
そのうえで整体院としてできることは、病気そのものを治療することではありません。
当院では、
- 痛みによって緊張した身体
- 睡眠の質の低下
- 長期間続く身体のこわばり
- 自律神経の乱れによる疲労感
などに対して、身体が回復しやすい環境づくりをサポートしています。
強い痛みが続くと、身体は常に緊張状態になります。
その状態が続けば、休息や睡眠にも影響することがあります。
身体全体のバランスを整えることは、つらい症状と向き合うための大切なケアの一つだと考えています。
まとめ|その痛み、「いつもの腰痛」と決めつけないでください
今回、私自身が帯状疱疹を経験して、一番伝えたいことがあります。
それは、
痛みには、身体からの大切なメッセージが隠れていることがある
ということです。
もし、
- 片側だけ腰やお尻が痛い
- 坐骨神経痛のようなしびれがある
- 背中や胸がピリピリする
- 頭痛と頭皮の違和感がある
- 怪我や強いストレスの後に痛みが出た
- 発疹は治ったのに痛みやしびれが残っている
このような場合は、「いつもの痛み」と決めつけないことが大切です。
帯状疱疹は、経験した人にしか分からない辛さがあります。
私自身も、施術する側から、患者様と同じ「痛みを経験する側」になったことで、改めて患者様の不安やつらさを理解することができました。
身体の痛みには、必ず理由があります。
一人で悩まず、気になる症状がある場合は早めに専門機関へ相談してください。
そして当院では、自分自身が痛みを経験したからこそ分かる視点を大切にしながら、身体の状態に寄り添った施術を行っています。








